完璧な男の人が苦手
※B店体験編、昨日の続きです
当日、様子見の為A店の時同様に早めに向かう。
……いや場所、近場どころかご近所さんじゃねえか。
そりゃ仲良くもなるわ。
という訳で人通りと客の出入りはA店と全く同じだった。
出迎えてくれたボーイさんの三言目の台詞が「この前A店行ってたんだよね?」
情報まわるのはっや。仲良しかよ。
ボーイさん曰く、私がこの前の仕事体験をする前にA店ボーイとの話で私が両方の応募してたことを知ったらしい。
A店で別のガールズバーの仕事体験も応募したと言ったらすぐに「もしかしてB店でしょ」と聞き返されたのはそういうことか。もしかして、じゃないじゃん。もう知ってんじゃないの。
B店のボーイさんも陽キャという感じだった。れでぃせでぃごーの煙草吸ってる人と同じベクトルのイケメン。画面越しでならキャピキャピ言えてた。せめて液晶越しで見たかった。
……ボーイという職業はある程度顔が整ってないと駄目なのだろうか。
そんなことないか。
A店のボーイさんは仕事サボってそう(失礼)な雰囲気があったので親しみを持ててたのだが(失礼)、こっちのボーイさんは「イケメン」「仕事出来るしちゃんとやる(イメージ)」「優しい」と三拍子揃っていて私にとってもう、もう……
……恐怖の対象でしかなかった。
──小学校低学年の頃、隣の席に「イケメン」「勉強も運動も出来るしちゃんとやる」「優しい」男の子がいた。
頭が良く、足が速くてサッカーが上手く、一、二を争う程のモテ男子でありながら、私が教科書を忘れた時には嫌な顔ひとつせず進んで見せてくれたくらい優しい完璧少年だ。
恋愛感情を持つことはなかったが勿論当時の私はその子に対して恐怖は持ち合わせていなかった。
そんなある日、その子は教室の隅で静かに佇んでいた。
ただ、誰かと喧嘩でもしたのか、その子は明らかに機嫌が悪かった。遠く離れた私の席からでも怒りのオーラが伝わってくる程だ。
男女共に好かれていて、何でも出来て、心優しいあの男の子が、何故あんなに怒っているのか。
そんなギャップのせいなのだろうか。
怒りの原因に全く検討をつけれないからだろうか。
とにかく私はあの時の男の子を見て異常な程の恐怖を覚えた。
そして以降、似た条件の男の人がすっかり苦手になってしまったのだった──
──顔が引き攣っていたのか、上手く喋れなかったのか、「なんか怯えてない?」と言われてしまった。
すぐさま「いえ! 全然!」と答えたが説得力は皆無だったことだろう。
そして客の数と来る予定の女の子の数によって仕事体験は翌日に変更となった。
「明日は俺他の所行っちゃって別の人が担当になるんだけど」のひと言で少し安心してしまった。
それどころか翌日に変更になったことにより、今日はもう帰れるというので既に安心してしまっている。
此処は駄目かも知れない、と思い始めていた。
登る階段の数がB店の方が多いし、来て早々に虫出るし、カウンター席以外に何かテーブル席あるし(キャバクラみたいな接客しなきゃいけないのか?)。
この時点で内心ではもう殆どA店の方を選んでいた。
しかし給料面の話をされた時に迷いが生じた。
ドリンクやシャンパンを頼まれた時のボーナス料がこちらの方が高いのかも知れない。
この前の仕事体験のお給料を話したらボーイさんも何か違和感を感じたのだ。そしてうちの店、B店の方が高く付くよと言っていた。
まあ同じガールズバーとはいえ違う店舗だし、仲良しとはいえ業務のことはあまり話してくれないらしいので実際のところはどうなのか知り得ないのだが。
ドリンクボーナスの他にも指名ボーナスというのもあるらしく、それ等を駆使出来れば1日に5万は稼げると言っていた。
そのお店で 1番稼げる子は繁忙期の時、月に100万以上稼いだらしい(すご)。
その辺はA店はどうなのだろうか。ボーナス料が少なかったり、そもそもボーナスがないとかだったら明らかにB店の方が稼げるということになる。
今私は生活に余裕を持たせる分以外に引越しや北海道に行く為の資金が欲しいところ。そう考えるとB店の方が良いような気もしてきた。他の条件はすぐ辞めると思えば全然許容範囲だ。
とりあえず明日の仕事体験を終えてから色々考えよう。
※次の記事へと続く