私を救った世界はやがて私を苦しめる歌となった。
どうかお願いします。
何度貴女に助けを求めたのだろう。そして私は何度も救われた。
人生の半分以上といっても差し支えないくらいに、永い間を貴女と共に生きてきた。
周りの叫びと違って貴女の叫びはいつだって爽快で、いつだって私を高揚させた。そして貴女の哭き声は周りの泣き声や鳴き声と違っていつだって誇り高く、いつだって私を揺れ動かした。
貴女が見せてくれる世界は眩いほど色鮮やかで、まるでモノクロテレビから現実を眺める様だった。
時には耳を塞ぎ、目を塞ぎ、心を包み込んでくれた。
貴女を感じる間だけ、私は地獄から抜け出せていたのです。
貴女の魅力はいつまでも私を放すことはないし私も貴女から離れることはなかった。これからもなかったのだろうという自信だってあります。
赤、緑、青。気が付けば今だって貴女に近付こうと三原色をこの身に纏ってる。
貴女に憧れ貴女になろうとした。
それが到底出来ないこととはわかりきっていたけれど、それでも私は貴女に近付きたかった。
その華奢な指先に触れることすら叶わない距離にいるというのに──幾度も身体を重ね合った男達よりも、何年も心を交わした友人達よりも、あまつさえ私を産み落とした母体よりも──ずっと貴女は傍にいた。
これ等がくだらない独りよがりな妄言として扱われても構わない。例え貴女にその気がなくとも。
貴女は私を救ってくれた。それだけが事実なのだから。
嗚呼どうして。どうして、どうして!
ずっと傍にいてくれたはずなのに。
どうしてこんなに苦しくなるの。どうしてこんなに哀しくなるの。
今では貴女の破片を思い出しただけで嗚咽を吐き出しそうになる。
胃液と泪がぐるぐるぐるぐる。
何遍考えたって出てくるのは「貴女は悪くない」のひとことばかり。
それもそうだ。だって私が選んだ道なのだから。貴女を言い訳にしたって、決めたのは紛れもない私自身。所謂は自業自得なのです。
これ等を低俗で哀れな被害妄想だと笑われたって構わない。例え貴女に許されなかったとしても。
私は貴女から逃げ出した。それだけが事実なのだから。
どうかお願いします。私のことを忘れてください。こんな醜い私を思い出さないで。
どうか、どうかお願いします。これからも幸せに暮らしてください。貴女の平穏が少しでも崩れてしまうことが何よりも恐ろしい。
サヨナラさえも言えない私を責めて。
誰よりも貴女のことを愛してる。