悟ったような面するブログ

無い脳味噌と知識で垂れ流している。

城も歌声も無くした姫サマはお呼びじゃねえ

最近、一切歌わなくなったなあと、不意に感じた。
カラオケに行かなくなったからというのが一番大きいのだろうが、私は歌うのが好きだ。例えカラオケに行かなくても鼻歌交じりに口ずさむことは頻繁だった。
──それなのに、一切歌わなくなった。


音楽なら勿論今でも頻繁に聴いている。何なら新たに聴き始めた曲が幾つかあるくらいだ。

私にとっての音楽は唯一私を化け物から逃がしてくれた存在であり私を人間にしてくれた存在であり私を受け止め傍に居てくれた存在である。
他所からすればただ5分かそこらの時間、現実逃避させるだけものかも知れない。それでも昔からいつも耳と目、そして心までも優しく塞いでは私を守ってくれてたのは私にとって紛れもない事実だ。

聴くのは勿論、歌うことも私がほんの少しの間だけ私を救い出せる行為だ。嫌いになるわけがないし、そんな感情は毛頭ない。

それなのに滅多に歌わなくなったのには心当たりがある。


その心当たりは2つある。

「今いる場所が自分の城ではない」
「自分を嫌いになり過ぎた」

この2つだ。


前者はまあ、私のTwitterをフォローしてくれている方々ならば察してくれるだろう。

そうでない方に説明すると、私は今自分の家に住んでいない。
いや、一応自身で契約して暮らしている家はある。ただ事情により、その家の方には殆ど近寄らずに同棲もとい居候という形でワンコ君(友人)の家にお邪魔しているのだ。
ワンコ君には大変迷惑を掛けてしまっているのだが、デメリットを教えた上で許可を貰ったのでそこについては今はスルーして頂きたい。

説明の通り、私が今暮らしている家はワンコ君の家であり決して私の家ではない。
当然、周りを見渡せばワンコ君の私物と趣味だらけ、衛生環境も彼の基準だ。それ等を捻じ曲げようと(掃除はするけど)いう気は更々ない。というかそんな権利はない。

此処は彼の城なのである。私の城ではない。

正直、仲の良い友人とは言え他人の城で四六時中落ち着けるわけがない。

そりゃあ全く落ち着いていないと言うのは嘘になる。誰だって動物だって慣れはする。そして慣れてしまえば良くも悪くも落ち着くものだ。

それでも限度ってものがある。
私の家だっていつ化け物が来るかわからない、時にそれでパニックを起こすこともある。しかしそれはワンコ君の家だって同様であり、いつ誰が来るかわかったもんじゃない。

それでも好きなものに囲まれ法的にも私だけの空間と認められた安心感は大きい。何やかんや言って自分の城というのはリラックスにおいてとても重要だったのだ。

自分の城である以上、化け物の脅威がない時は落ち着くことができ、「独り」でいられた。この「独り」が私がカラオケと同じくらい歌う際に必要なものだった。

ワンコ君と一緒に暮らしてる以上、独りになれる時間は少ない。そうなれば必然的に歌うことも少なくなっていく。

何ともまあ、どうしようもなく呆れてしまう心当たりだ。


後者の方は単純明快である。
単に自分の声に不快を感じ始めただけだ。
元々好きでもなかったが、それが悪化したに過ぎない。

よく現実逃避の一環で妄想の類いをするのだが(引かないでほしい)、その中にいる自分は当然人間だ。容姿も脳味噌の出来も現実とは違う。勿論声も違う。
ひきこもるようになってからは妄想の時間と回数が日に日に多くなっていった。当然、妄想と現実の自分を比べてしまうことも増えていった。

さっきまで普通の声をしていた(妄想の中)のにいざ口を開いてみたら(現実)この声だ。自己嫌悪が強くなるのも無理はない。
現実の醜い声を聞きたくなくて口を閉ざすようになるのも時間の問題である。


前者で「独りになれる時間は少ない」と書いたが、何も全くないわけではない。
待とうと思えば独りの時間は訪れるのだ。そしてその際に音楽をかけて歌うことも可能である。

しかし、実際は音楽を聴くだけ聴いてあとはせいぜい脳内で歌うだけ。音を発音することはなくなった。


他人からすればどうでも良いことだ。私もそう思うところがあるくらいだ。

だけど私からすると好きなものをまた嫌々捨てることとなってしまったというなかなかのしんどさがある。

歌うのは好きだ。でも歌う環境がない。環境が出来ても自分の声が嫌いで歌えない。
耳を塞いで必死に聞こえないようにするが、骨に響くその振動さえも気持ち悪い。

本当にどうでも良いと思う面もある。
しかし同時に歌う楽しみすら奪ったこの身体の価値がまた減った。点にするならマイナスに振り切ってることだろう。


これ以上私から好きなものを奪って何がしたいんだ? という自問はどうせすぐに自答が返ってくるのでなかったことにして、この辛さはどう誤魔化そうものか。

またカラオケにでも行けば馬鹿な私は再び歌えるようになると思うが、もう行けるかわからない上にそれまでの間は我慢するしかないのかと溜め息が出る。

やっぱり妄想の中で歌うしかないのか。そこでならいくらでも歌えるし何なら踊れる(草)。
それに自分の城で歌えばいつか王子様が現れてくれる。そして可憐なお姫様に一目惚れして結婚して幸せに暮らす……

なーんて馬鹿が見るような夢も叶えられるし、一石二鳥どころか三鳥四鳥にもなりそうだ。


せいぜい現実の私はパクパク鯉みたいにやってろよと言い聞かせるしか今の私に方法はない。